ニュースでもたくさん報じられるようになり、チャリティーなのか一過性の流行りなのか、その真意が見えにくくなった氷水を被る行為。正式にはアイスバケツチャレンジと呼ばれているようです。
私が初めて知ったのは、ティム・クックやビル・ゲイツといった著名人が行ったというニュースから。

アイス・バケツ・チャレンジとは、Facebook等のソーシャルメディア上で広がった慈善運動。主にALS治療のための寄付を呼び掛けている。現在も世界的な広がりを見せている。その中には有名人や各界の著名人、さらには政治家も含まれており、寄付金の増加やALSの認知度向上に貢献している。

引用元: アイス・バケツ・チャレンジ – Wikipedia

日本でも孫正義氏や秋元康氏など、著名な方々が多数挑んでおられます。
このルールは下記に書いてある通りで、24時間以内に3人を指名するというもの。

バケツに入った氷水(アメリカのスポーツ界では氷水は祝福を意味しアイス・バケツ・チャレンジでは元気を与える意味がある)を頭からかけている様子を撮影し、それをフェイスブックやツイッターなどの交流サイトで公開する、あるいは100ドルをALS協会に寄付する、あるいはその両方を行うかを選択する。そして次にやってもらいたい人物を3人指名し、指名された人物は24時間以内にいずれかの方法を選択する[6]。

ただ、氷水を頭からかけることや寄付をすることが強制ではないことには留意する必要がある[7]。

引用元: アイス・バケツ・チャレンジ – Wikipedia

3人を後から指名するその手法が、日本で悪いイメージで広く知れ渡っている「チェーンメール」と近い部分もあり、少し抵抗を感じる部分があります。

この流行りの運動に対して批判的な声も多く上がっているようで、かくいう私もその一人でした。
氷水を被ることになんの意味があるのか、単なる売名行為ではないか、寄付をしたいのなら黙ってすべきではないか、など色々とモヤモヤする思いがありました。
しかしその一方で、ALSを広く知ってもらい寄付金が集まることで治療法が確立されることも望ましいことであり、なかなか気持ちの整理が付かない状態であります。

私の父もALSを患い、息を引き取りました。

昨年の10月末に心肺停止状態で運ばれた時に、難病指定のALSと診断され余命がかなり短いとの宣告を受けました。

引用元: ご報告

そもそもALSとは、全身の筋肉がだんだんと衰え、喋ることすらままならなくなります。そして心臓の筋肉も次第に動かなくなり、最後は心肺停止で息を引き取るしかなくなる難病の一つです。
筋肉が衰えるだけなので、脳は健常時と同じように動いており、喋れないだけで周りの声はしっかり聞こえ、考える事もできます。それ故に人工呼吸器をつけて延命処置をし、文字認識などを使って会話が出来るようにされている方も居ます。しかし人によってはその延命処置がかなりの精神的負担に成ることもあり、人工呼吸器を望まない人も居るようです。
人工呼吸器を付けないとなると、当然心臓が動くまでが寿命となるので余命は限られてしまいます。どちらが良いかはなかなか簡単に決められるものではないと思います。

私の父は人工呼吸器を付けない方を選択しました。といっても、選択したのは父本人ではなく残された家族。当然その中に私も含まれています。
心肺停止で運ばれた時はすでに父の意識は無く、父本人にその選択を迫るのは困難。そしてその選択は、ALSと診断されたその時に決めなければなりませんでした。父の命の行方を短い時間の間に決めなければならなかったのです。
僅かな時間で人工呼吸器を付けない選択、つまり筋力が衰えるのを待つだけの選択をしたことが正解だったのかは今でもわかりません。命を奪う選択をした、と言われても仕方ないのかもしれません。それくらい家族にも辛い病気だと思っています。
ALSに罹っている全ての方、あるいはその家族の方がまったく同じ思いかどうかは私には解りませんが、少なくとも辛い思いを強いられるのは同じだと思います。

ちょうどALSが世界中で(あるいは日本とアメリカだけ?)話題に登り、それに伴い寄付金がかなりの額集まっているそうなので、それなりの効果が出ているのは間違いないでしょう。そういう面から見ると、この運動は決して間違ったものではないのかもしれません。

しかしその反面、いっときの流行りになってしまい、時間が経つとあっという間に忘れ去られてしまう可能性も十分考えられます。とくにニュースなどでは、ALSやその寄付ではなく、氷水を被る著名人という部分だけが取り沙汰されて、肝心な部分が抜け落ちているように感じます。またALSだけでなく、難病と呼ばれている病気は他にも沢山有ると思います。じゃあALS以外の病気を患っている方たちは今回の運動をどう考えるのか、それを思うと複雑です。

今回の一連の運動で一気にALSが知れ渡り、認識を深めてもらえることは大変有り難いです。しかし肝心の患者や家族、病気そのものといった一番肝心な部分の報道が弱いのが非常に残念です。特に日本の報道はそこばかりに注目しているようで…